配偶者と別居中の方から離婚のご相談を受けることがあります。
「別居して1年が経ちました。離婚できますか?」といったご相談です。
民法では、何年間別居すれば離婚できるという定めはありません。
ただし、「民法の一部を改正する法律要綱案」(平成8年2月26日法制審議会総会決定)では、5年以上の別居が離婚原因になるとされていますので、別居期間5年が一つの目安になるでしょう。
ご注意いただきたいのは、上記「民法の一部を改正する法律要綱案」は、あくまでも「案」にすぎないということです。
この「案」どおりに民法が改正されたわけではありません。
別居中のご夫婦の間には、別居に至るまでに、さまざまな事情・原因・理由があったはずです。
裁判官は、別居期間だけでなく、このような事情・原因・理由をも総合的に考慮して、離婚を認めるかどうかを決めます。
そのため、別居期間5年超でも離婚を認めないとした判例も相当数存在します。
逆に、別居期間が短くても離婚を認めた判例も当然存在します。
浮気など、民法770条1項1号から4号の事情があれば、別居期間に関係なく、別居期間がなくても、離婚が認められることもよくあります。
夫婦関係が破綻したことについて責任のある方(=有責配偶者)が離婚を求める場合には、長期間の別居が必要とされることもあります。
別居後も、収入が少ない配偶者や子供が困窮しないよう、きちんと生活費を渡してきたかどうか。
裁判官は、この点を重視します。
別居後、収入が少ない配偶者や子供に生活費を渡してこなかった場合には、別居期間5年超でも離婚が認められないこともあります。
別居したとしても、たとえ離婚を望むにしても、配偶者や子供には誠実に向き合っておくべきでしょう。
なお、裁判(判決)ではなく、協議・調停・和解の手続であれば、ご夫婦の合意が全てです。
別居期間の長短にかかわらず、ご夫婦が合意すれば、離婚は可能です。
別居期間が短く、ご自身に結婚生活破綻の責任がある場合には、協議・調停・和解など話し合いの手続で解決なさることをお勧めします。
垂水駅前法律事務所 弁護士 松岡英和