自分が死んだ後、相続・遺産分割のことで子供たち(相続人)の間で争って欲しくない。
そんな想いで、「争族」とならないよう、遺言・遺書を作った父親がいました。
それなのに、父親が亡くなった後、いくら探しても肝心な遺言・遺書が見つからない。
父は、生前、遺言・遺書を書いてあると言っていたのに・・・・
こういうご相談がよくあります。
父親が公正証書で遺言を作っていたら、公証人役場で遺言の検索をすれば、遺言を見つけることができます。
それでは、もし父親が手書き(自筆)で遺言・遺書を書いたのなら、どうなるでしょうか?
遺言・遺書は、大事なものですので、貸金庫や仏壇・貴重品を収納している引出しなどに置かれていることが多いです(ちなみに、父親が会社経営をされている方だった場合、会社の顧問弁護士が保管していることもあります)。
したがって、子供は、そういった場所に父親の遺言・遺書がないか必死に探してみます。
それでも、やはり遺言・遺書が見つからない。どこをどう探しても見つからない。
そうなってしまうと、もはや諦めるしかないと申しますか、法定相続分にしたがって遺産分割していくということになります。
これでは、子供たちのことをおもってせっかく作った父親の遺言・遺書が台無しになってしまいますね。
自筆で書いた遺言・遺書は、紛失のリスクが常につきまといます。
そこで、この度、紛失のリスクを避けるべく、新しい制度が作られました。
簡単に説明しますと、法務局が、父親が自筆で書いた遺言・遺書を保管するのです。
父親が亡くなった後、法務局に遺言・遺書の謄写や閲覧を請求すれば、無事遺言が見つかります。
この新制度は、来年(令和2年)7月10日から開始されます。
法務局に保管してもらうための費用がいくらになるかは、現時点では公表されていないので、今後注視していきたいと思います。
ちなみに、自筆で書いた遺言・遺書は、法律で決められた要件を満たしていないと、無効になってしまうことがあります。
また、遺言・遺書の内容によっては、せっかく遺言・遺書を作ったのに、親族間の争いがかえって深刻化してしまうことがあります。
自筆で遺言・遺書を書くにしても、形式や内容については、専門家にご相談なさって、原稿を作ってもらうことをお勧めします。
垂水駅前法律事務所 弁護士 松岡英和