垂水駅前法律事務所

明石市の養育費条例案(シングルマザーの保護とプライバシー)

明石市が、養育費を支払わない者に過料(刑罰ではないが、行政罰で金銭の支払を伴います)を科す条例の制定を目指すそうですね。すごい!!!

 

行政が介入すべき問題なのかな?という気がしなくもないですが・・・・両親の離婚後も子供が健やかに育つためには、収入のある片親からの経済的支援が必要なのは言うに及ばず、子供を犠牲にした逃げ得(養育費の踏み倒し)は断じて許されません。
よって、私はこの条例案に賛成です。

 

ただし、養育費を支払わない片親の氏名公表には反対です。なぜなら、プライバシー侵害の程度が大きいこと、氏名を公表された片親の社会的信用が失墜しかねないこと、片親の氏名公表に伴う子供の精神的苦痛は看過できないこと、さらにいえば、子供のいじめにつながりかねないこと等からです。

 

仮に、氏名を公表された片親が職場に居づらくなり、退職するような事態になれば、それこそ養育費を支払えなくなります。氏名公表ではないですが、養育費を支払えずに給料の差押えを受けた片親が、職場に居づらくなり、退職してしまったという事案も、現に存在するのです。

 

経済的に弱い立場にある片親と子供の困窮を防ぐことはすごく大切ですが、だからといって、養育費を支払わせるという名目で、養育費支払義務者の権利(特にプライバシー権)が不当に侵害されてはなりません。

 

いったんプライバシーを侵害されたら、事後的な救済は極めて困難です。その点、現在の明石市長は弁護士であり、積極的に弁護士を職員として採用なさっていますので、法律家の観点より、養育費未払対策を慎重にご検討ください。
養育費未払対策の必要性には強く賛同しますが、その手段の選択には丁寧かつ慎重な議論を重ねていただきたいですね。

 

なお、新民事執行法では養育費未払対策に有効な条文が設けられていますので、時機を見てご紹介させていただきます。

 

垂水駅前法律事務所

弁護士 松岡英和

 

 


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