離婚したいけど、オーバーローンのマイホームをどうしたら良いでしょうか?そんなご相談がよくあります。
マイホームの時価が2000万円、住宅ローンの残高が3000万円、マイホームの所有権も住宅ローンの契約者も夫である場合を考えてみましょう。
マイホームの実質的な価値は、2000万円(時価)から3000万円(住宅ローン残高)を控除した▲1000万円(=1000万円のオーバーローン)ということになります。
では、夫は妻に、オーバーローン1000万円の半額である500万円を、財産分与として請求できるでしょうか?
→判例・通説では不可とされています。
オーバーローンの財産は、離婚に伴う財産分与の対象外とされているのです。
そこで、この場合には、次の①~③のいずれかで解決することが多いです。
①夫がマイホームに住み続け、夫が住宅ローンを支払う。
②妻がマイホームに住み続け、妻から夫に家賃を支払い、夫が住宅ローンを支払う。
③妻がマイホームに住み続け、妻が住宅ローンを支払う(マイホーム・住宅ローンの名義は夫のまま変更せず)。
ちなみに、マイホームの名義を夫から妻に変える場合、以下の点にご注意ください。
※マイホームの名義変更は、住宅ローンを組んだ銀行の承諾が必要とされていることがあります。
※マイホームの名義を変更すれば、住宅ローンの期限の利益を失う(=一括払いを求められる)ことがあります。
このように、オーバーローンの財産は、離婚に伴う財産分与の対象外となるのが原則です。
ただし、これは、あくまでも裁判の場合の話です。
協議・調停・和解といった話合いの手続では、夫から妻にオーバーローン1000万円のうちの一部を負担するよう求めることは自由です。
仮に、マイホームのほかに200万円の預金があれば、夫がオーバーローン1000万円を負担する代わりに預金200万円をもらう(預金全額は無理でも、預金を妻より多くもらう)という解決もあり得ます。
離婚やむなしとしても、夫婦で財産を公平に分ける・相手方への最低限の思いやりは持つ・お子さんの幸せを考えるといった視点は常に持っておきたいものです。
垂水駅前法律事務所 弁護士 松岡英和